三秋・天文/初秋から晩秋までの秋に吹く風。初秋は残暑のなかで吹き、しだいにさわやかになって、晩秋には冷気をともなう。
秋風や麵麭 の袋の巴里の地図 安住敦
正直、パリにはなんの思い入れもなくて、欧州大陸を放浪していたころ、真夏なのにセーヌ川の船の上で冷たい雨にふるえていたことくらいしか記憶にない。
パリジェンヌがバゲットを小脇にかかえて歩く姿を見たかどうか思い出せるわけもないが、想像するといかにもパリっぽくておしゃれではある。逆に、フランス人がおにぎりを齧りながら歩く日本人を想像しておしゃれと思うか否かは知らないけれど。
敦さんの一句は、実際にパリにいるんじゃなくて、パンの入った袋に描かれている地図を見て秋のパリを想っている。秋風にかおる焼きたてパンの香ばしい匂いは時空を超えて、思い出の、あるいは夢見るパリへと連れていってくれる。
現実に歩いている街が、たとえば銀座とか麻布なんかじゃなくて、両国とか柴又なんかだったらかえっておもしろいかもなあと思うのだが、敦さん、それじゃあだめですか。
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