運動会(うんどうかい)

三秋・人事/最近は春に行う学校も多いが、澄んだ空の下、さわやかな風に吹かれながら競技を観戦するのは秋ならではの気持ちよさがある。昼に家族とともに弁当を食べるのも楽しみのひとつ。


運動会午後へ白線引き直す  西村和子


ある俳句番組で西村さんがご自分のこの句についてふれていらっしゃった。

自転車の前と後ろに子供を乗せて、子育てってもう毎日たーいへん!とか叫びながら疾走しているものの(あくまでイメージです)、ほんとは子供が大好きで、けっこう楽しんじゃってるいいお母さんだったんだろうなと思った。

この句は運動会の光景として、だれもが目にしたことがあるものだろう。

「午後へ」の「へ」によって、午前の部が終わり、親たちが子供らとひろげたレジャーシートの上で弁当を食べている様子が見えてきて、午後の競技でのわが子の活躍に期待する親心まで感じとれる。

ごくありふれた素材ながら、たった一字の的確な選択が一句を大きくゆたかにふくらませて秀逸。

奇を衒ったようなことばや表現をもちださずとも、乾いた砂にきれいな水がすうっとしみこむように読み手の心に自然にひろがるこういう句がつくれたらなあとつくづく思う。


西村和子(にしむらかずこ)1948年、神奈川県生まれの俳人。清崎敏郎に師事。行方克巳と「知音」を創刊・代表。



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