復活祭(ふっかつさい)

晩春・宗教/処刑されたイエスの復活を記念する祝祭。春分のあとの最初の満月直後の日曜日。


黒土に鉄骨植ゑぬ復活祭  香西照雄


黒々としていかにも栄養のたっぷりとつまったような地面に、いま太い鉄骨が建つ。

もちろん鉄骨に栄養など必要のないものだが、「植ゑぬ」とみた作者は、ビル建築の印象的な第一歩を、その鉄骨の一本に強烈に感知し、若木が根を張りたくましく成長して花を咲かせ、虫や鳥を呼びよせ、新鮮な風を吹かせるように、やがて完成したビルが人を集め、まちに活気がもどる未来を思い描いたのではなかろうか。

災害の絶えないこの国では、壊れたものをとりのぞき、更地にして、また新たなものを築くことで復興をくり返してきた。

屹立する鉄骨は十字架の暗喩であるとともに、連綿とつづいていく生命の復活を象徴するものとしてあるように思えてくる。


香西照雄(こうざいてるお)1917-1987年。香川県生まれの俳人・成蹊大学講師。中村草田男に師事。


0 件のコメント:

コメントを投稿