春寒(はるさむ)

初春・時候/立春のあとの寒さ。余寒とちがい春のほうに重きをおく。


春寒の指環なじまぬ手を眺め  星野立子


もし季語が余寒だったら、この先の結婚生活に暗雲がたちこめている気がする。結婚なんてするんじゃなかったという後悔。

春寒だから明るい。しあわせで満たされた新しい人生の一歩を踏みだした。けれど、なぜかしらちょっとさみしい。ちいさな不安がないこともない。寒さがそれに気づかせる。

でも明日は暖かくなるだろう。傷もくもりもない光る指環をながめながら、気持ちはもう未来を向いている。


星野立子(ほしのたつこ)1903-1984年。東京生まれの俳人。高浜虚子の次女。「玉藻」を創刊・主宰。橋本多佳子、中村汀女、三橋鷹女らと同時代に活躍した。





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