颱風(たいふう)

仲秋・天文/北太平洋西部の熱帯海上、北緯5~20度付近に発生する熱帯低気圧で最大風速が毎秒17.2メートル以上に発達したものをいう。夏から秋にかけて暴風雨をともなって日本や東アジアを襲い、甚大な被害をもたらすことがある。


颱風一過女がすがる赤電話  沢木欣一


台風一過のぬけるような青い空の下、たばこ屋の赤電話で受話器を耳にあてている女。

通じないのか不安げな表情で黙っている。

強い風に体をもっていかれそうになり、とっさに赤電話につかまるような恰好に。

本当にすがりつきたいのは電話回線だけでかろうじてつながることのできる相手の男なのに。

噛みしめるくちびるは濃く塗られた赤で、ハイヒールはてらてらと赤く光っている。


沢木欣一(さわききんいち)1919-2001年。富山県生まれの俳人。加藤楸邨中村草田男に師事。「風」を創刊・主宰。社会性俳句を推進した。



0 件のコメント:

コメントを投稿