三春・動物/一年中見られる昆虫だが、花の蜜を求めて舞ふ春の姿はことにうつくしい。
日本語をはなれし蝶のハヒフヘホ 加藤楸邨
陽気にさそわれて公園のベンチで本をひらいていると、かわいらしい黄蝶がその上にとまった。
おいおい、ここに蜜はありませんぜ。それとも、柄にもなく難解な本に挑んでいる俺をからかってるつもりかい?
風が吹くと蝶は我にかえったように日本語から離れ、花壇のほうへと去っていった。
漢字が窮屈そうにならんだ本から飛びたったくせに、その恰好はどう見ても「ハヒフヘホ」。字面も音も、まさにそれがぴったりだ。
春の公園には、もうすこし軽い本のほうが似合うかな。
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