初秋・時候/二十四節気の一つ。8月7日頃。暑さはきびしいが、朝夕の風や流れる雲などに秋へ向かう気配を感じる。
立秋や鏡の中に次の部屋 辻田克巳
歳時記をめくっていて気になった一句なのだけれど、これはどんな場面なのだろう。
いつもの見慣れた家の部屋が鏡に映っているのを見るとどこか違和感があって、その感覚が、きのうと変わらぬ暑さのつづくきょうが立秋と気づいたとたん、どこかしら季節の変化を感じてしまう気分とひびきあうのかなあ、と思ったのだが、「次の部屋」という表現がどうもひっかかる。
記憶のなかからさぐりあてたのは、むかし行ったベルサイユ宮殿の部屋だ。
鏡の間ではあまりのくどさに気分がわるくなりそうだったが、あの回廊でなくても、部屋のなかに巨大な鏡が設えてあって、「次に進むべき部屋」がそこに映し出されているのを見たような気がする。
現実の次の部屋は反対側にあるのに、あたかも鏡の平面の向こう側に部屋がつながっているようにみえる不思議。鏡のつめたいイメージのせいか、立っている場所とは部屋の空気がちがっているようにも思える。
そっちの部屋にそっと足を踏み入れたなら、季節はもう次の秋へと移ろっているのかもしれない。
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