夏終る(なつおわる)

晩夏・時候/登山、海水浴などのシーズンが去りゆき、惜しまれる。


泉の底に一本の匙夏了る  飯島晴子


こんなところになぜこんなものが、という発見をすることがある。

避暑地の泉だろうか。澄んだ水底に光る銀の匙。

落ちてしまったのか、投げ捨てたのか。すくおうとしていた、あるいはすくったものはなんだったのか。

ここに間違いなくだれかがいたひとつの痕跡。終わってしまった夏の物語。

銀色のちいさなきらめきは、夕映えを最後に、徐々につめたくなっていく水の底で、もうだれの目にもとまることはない。


飯島晴子(いいじまはるこ)1921-2000年。京都府生まれの俳人。能村登四郎に師事。




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