盆支度(ぼんじたく)

初秋・人事/盆に先祖の霊を家に迎える準備のこと。墓掃除や仏具みがきのほか、盆棚にしく真菰を用意したり、野菜や果物など供え物をそろえたりする。


亡き妻のすでに来てをり盆支度  森澄雄


生前、家のこと、身の回りのこといっさいを担っていた妻と、仕事ばかりでほかのことには無頓着だった夫。

亡き妻の新盆だというのに、なにから手をつけてよいのか皆目わからない。頼むからもどってきてくれと叫びたい気分。

いや、待てよ。あいつのことだから、きっと心配で矢も楯もたまらず、なんの準備もできていないのに、もううちに帰ってきているんじゃないか。

まいったとばかりに苦笑いして頭をかく夫。おかしみのあとに、じんわりとひろがる悲哀。


森澄雄(もりすみお)1919-2010年。兵庫県生まれの俳人。加藤楸邨に師事。「杉」を創刊・主宰。



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