五月闇(さつきやみ)

仲夏・天文/五月雨がふるころの月の出ない夜の暗さをいう。この時期の厚い雲におおわれた日中の暗さをさすこともある。


すり寄りし犬の肋や五月闇  川崎展宏


静かな雨のなか、仕事から帰ると庭へまわって、シロの様子を見にいく。

暗闇に白いかたまりが動いたのでほっとする。

ゆっくり立ち上がり小屋から出てきたシロは、しゃがんだわたしに身を寄せ、甘えるような目を向けてくる。

頭を撫ぜ、背中をさすってやる。日に日に肉が落ち、肋は浮き出ている。

ぱらぱらと傘にあたる雨つぶの音と、シロのかすれた呼吸音。

せめて、あしたは晴れてくれないかと切に思う。


川崎展宏(かわさきてんこう)1927-2009年。広島県生まれの俳人・国文学者。加藤楸邨に師事。「貂」を創刊・主宰。



0 件のコメント:

コメントを投稿