梔子の花(くちなしのはな)

仲夏・植物/梔子はアカネ科の常緑低木で暖地に自生。庭木として多くの園芸種がある。6~7月、芳香の強い白色の一重または八重の花を咲かせる。


くちなしの花びら汚れ夕間暮  後藤夜半


生家の庭にはけっこういろんな木があったけれど、梔子ほど香りの強い花を咲かせるものはなかったと思う。鼻を近づけて、花弁に黒いちいさな虫がたくさんうごめいているのにのけ反った子供時分を思い出す。

ひらいたばかりのものはまさに純白の華やかさがあるものの、雨の多い季節に咲くせいか、すぐに黄ばんで見苦しくなってしまう。残念というか、なんだかかわいそうな花である。

明るい光のもとではなく、夕方のうす暗さに花びらが「汚れ」ているのを見た。一日を終えようとする人の疲労感が甘い香りににじんでいるような気がしてくる。


後藤夜半(ごとうやはん)1895-1976年。大阪府生まれの俳人。高浜虚子に師事。「諷詠」を創刊・主宰。





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