牡蠣(かき)

三冬・動物/イタボガキ科の二枚貝の総称。大小さまざまで、潮間帯の岩などに固着する。

食用となるものが多く養殖も盛ん。冬季はとくに美味で滋養に富み、調理法は多様。


牡蠣食ふやテレビの像に線走る  田川飛旅子


地方のいかにもひなびた海辺の食堂。

ここに来たからにはやっぱり牡蠣でしょ。はずれるわけがない。

ほうら、うまいうまい。みんな黙々と牡蠣を口へ運んでいる。

店の隅の高いところに古ぼけたちっちゃなテレビがあって、この時間にはどこでもついていそうなお昼の番組をやっている。

牡蠣がうまけりゃそれで十分、そんな番組はどうでもいいのだけれど、なぜか口をもぐもぐさせながら、ついちらちらとテレビに目を向けてしまう。

画像の色はヘンだし、妙な線がちかちかと走ってるよ、このテレビ。もう買い換えたほうがいいんじゃない?

まあ、だれもまともに観るわけじゃなし、牡蠣さえうまけりゃそれでいいか。

ごちそうさまでした。


田川飛旅子(たがわひりょし)1914-1999年。東京生まれの俳人・工学者。加藤楸邨に師事。「陸」を創刊・主宰。



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