セーター

三冬・人事/毛糸などで編んだ防寒用の上着。襟型や色、柄などは流行もあってさまざま。


愛ほろぶごとセーターのほどかるる  岡本眸


いまの若い人らも恋人に手編みのセーターを贈ることがあるんだろうか。

「愛ほろぶ」って、なかなか強烈な表現だけれど、愛をもって丹念に編んだセーターをほどいているのはその当人か。

失意のうちに、なかば呆然とした様子で毛糸をほどいてゆく姿には凄みさえ感じられる。

想い人の姿かたちが、ゆっくりとみずからの手でくずされ、なきものとなってゆく。

たとえセーターはただの毛糸のかたまりに戻っても、その心が解きほぐされるまでにはきっと時間がかかるのにちがいない。


岡本眸(おかもとひとみ)1928-2018年。東京生まれの俳人。富安風生・岸風三楼に師事。「朝」を創刊・主宰。



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