白夜(びゃくや・はくや)

仲夏・時候/夏至前後、北極または南極付近で、夜になっても散乱する太陽光のために薄明が長時間つづく現象。


街白夜王宮は死のごとく白  橋本鶏二


かつてイングランドの田舎町で過ごした夏、パブで飲んだ帰り、もう11時近いのに自転車で走る牧草地の西の空が明るくて奇妙だった。

昼はたしかに去ったものの、夜になりきれないままの不思議な時間。

短い夏をすこしでも満喫しようと遅くまで出歩いていた人々も、さすがにもう眠りについたか。

この世とあの世のあわいにあるような静まりかえった街に、妖しく白くぼんやりと浮かぶ王宮。

人は死してもどこかに痕跡を残すように、その白は闇に沈みきることはなくて、やがてまた朝の陽に堂々たる姿をあらわすことだろう。


橋本鶏二(はしもとけいじ)1907-1990年。三重県生まれの俳人。高浜虚子に師事。「年輪」を創刊・主宰。





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