隙間風(すきまかぜ)

三冬・天文/障子や戸、壁などのわずかな隙間から吹きこむ冷たい風のこと。目貼りをして防いだりする。


隙間風終生借家びととして  石塚友二


なんともわびしい一句だが、こういう妙に生活臭のつよい実感のこもった句はけっこう好きだ。

うまいことやって出世して隙間風のすの字も吹きこまぬような立派な家に住む幸福もあれば、つましい暮らしからなんとか毎月家賃を捻出して大家に納め、今年もぴゅーぴゅー隙間風にやられる季節になったなあと思いながら、金にもならない俳句なんぞをちまちまひねっている幸福もある。私はあえてそれを幸福と呼びたい。

「終生借家びととして」の措辞は、決して悲観やあきらめではなく、俺の人生はこれでいいのだ、これがいいのだという自身への肯定的な意志表明に感じられるからだ。

冒頭でわびしい一句といったけれど、なんのなんの、隙間風で一句できたぞとほくそ笑むたくましさ、生活は苦しくとも人生を楽しむ余裕を味わっている作者に拍手を送る私がいる。


石塚友二(いしづかともじ)1906-1986年。新潟県生まれの俳人・小説家・編集者。石田波郷の後を継ぎ「鶴」主宰。




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