春の雷(はるのらい)

三春・天文/春に鳴る雷。寒冷前線の通過に伴うもので、積乱雲のおこす夏の雷の烈しさはない。


山鳩は愚図な鳥なり春の雷  森瀬茂


遊歩道でも山道でも、山鳩はたいがい番いで地面をついばんでいる。

驚かさないようにゆっくり通りすぎようとしているのに、かなり接近してから体の向きを変えて歩きだし、だんだん早足になって、しまいにはバサバサと羽音をたてて飛びたってゆく。

その逃げ方のどんくさいこと。山鳩に出くわすたびにいつもそう思う。

きっと真っ暗な空で雷が鳴りだしても、聞こえているのかどうか、雨脚が強くなってからあわてて木の繁みに逃げこんだりするのだろう。

「愚図な鳥なり」ときっぱり断定してはいるけれど、そこに作者の愛情の裏返しを感じてしまうのは、季語が夏の激烈な雷ではなく、春の到来を告げるものだからだろう。 


0 件のコメント:

コメントを投稿