三春・時候/春の日が暮れてまもないころ。明るくつやめいていて感傷をさそう。
春宵やナプキン立てて予約席 長岡きよ子
「人生で起こることは、すべて、皿の上でも起こる」(『王様のレストラン』)。
始まりより終わりを詠むと佳句になると学んだけれど、この句のワンカットはすてきだ。
どんな人が現れて、どんな料理が並べられ、どんな会話がなされるのか。
客は一人かもしれないし、夜がふけてもナプキンが立てられたままということだってありうる。
厨房にいるシェフは絶好調かもしれないし、自信喪失気味かもしれない。あるいは無断欠勤で急遽代役にあたった見習いが奮闘しているのかもしれない。
厨房と客とをつなぐ皿だけが、今夜のすべてを知っている。
これから始まる物語を予感させるレストランの春宵のひととき。
またあのドラマが観たい。
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