蠅取リボン(はえとりりぼん)

三夏・人事/蠅を捕るためにつるす粘着性物質を塗ったリボン。

蠅取リボン蠅の書きたる一行詩  中原道夫


蠅取リボンなんて、とりこわされた父の生家とともにこの世からとっくに消え失せたものと思っていたが、調べてみたら、いまでもしっかり販売されているので驚いた。

となると、「蠅の書きたる一行詩」はまだ津々浦々、あんなところにもこんなところにもぶら下がっているわけか。ほんとかいな。

何度読んでもにやりとしてしまう一句だけれど、この一行詩っていわば蠅の辞世の句なんだよなあ。合掌。


中原道夫(なかはらみちお)1951年、新潟県生まれの俳人。能村登四郎に師事。「銀化」を創刊・主宰。





梔子の花(くちなしのはな)

仲夏・植物/梔子はアカネ科の常緑低木で暖地に自生。庭木として多くの園芸種がある。6~7月、芳香の強い白色の一重または八重の花を咲かせる。


くちなしの花びら汚れ夕間暮  後藤夜半


生家の庭にはけっこういろんな木があったけれど、梔子ほど香りの強い花を咲かせるものはなかったと思う。鼻を近づけて、花弁に黒いちいさな虫がたくさんうごめいているのにのけ反った子供時分を思い出す。

ひらいたばかりのものはまさに純白の華やかさがあるものの、雨の多い季節に咲くせいか、すぐに黄ばんで見苦しくなってしまう。残念というか、なんだかかわいそうな花である。

明るい光のもとではなく、夕方のうす暗さに花びらが「汚れ」ているのを見た。一日を終えようとする人の疲労感が甘い香りににじんでいるような気がしてくる。


後藤夜半(ごとうやはん)1895-1976年。大阪府生まれの俳人。高浜虚子に師事。「諷詠」を創刊・主宰。