鳥屋師(とやし)

晩秋・人事/つぐみ花鶏あとりなど、秋に渡来する小鳥の群れを捕らえるのを生業にする人。山林などに霞網を張りわたし、おとりの鳥を鳴かせ、鳥の群れが網目に首を突っ込んだところを捕獲する。霞網は現在は使用禁止。


袂より鶫とり出す鳥屋師かな  大橋櫻坡子


袂から鳩をとり出したら手品師になってしまうが、鶫である。そして、鳥屋師である。

よくわからないので調べてみた。

山を歩いていると「鳥獣保護区」の赤い看板を見かけることがある。そこでは狩猟が禁じられているが、そもそも鶫は捕獲が認められた狩猟鳥獣ではないので、保護区域外であっても捕ってはいけない鳥である。捕獲した場合、鳥獣保護法違反で罰せられる。

鶫はかつては貴重なたんぱく源として食用にされた。現在でも伝統的に鶫を食べる習慣があった地域では密猟があとを絶たないといわれている。

この句はむろん、猟が禁じられる前の鳥屋師を詠んだものだろうけれど、袂からとり出すという仕草が、なんとなくこっそりおまえにあげるよという感じ。

密猟の現場じゃなくて、鶫が大好物の彼女への告白の現場!? そんなわけないか、大橋櫻坡子さん! 


大橋櫻坡子(おおはしおうはし)1895-1971年。滋賀県生まれの俳人。高浜虚子に師事。「雨月」を創刊・主宰。



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