曼珠沙華(まんじゅしゃげ)

仲秋・植物/ヒガンバナ科の球根植物。堤防や畔、墓地などに生える。秋の彼岸のころ50センチほどの花茎を1本のばし、真っ赤な花を輪状につける。葉は花後に叢生し翌春に枯れる。曼珠沙華は天界に咲く赤い花を表す梵語。全草有毒。


死ぬときは火柱たてて曼珠沙華  石飛如翠


一瞬、火葬場で遺体が焼かれるのを思ったのだが、「死ぬときは」であって、「死んだあと」ではない。後者では凡句になってしまう。

だれかを看取るにしても、自身の最期にしても、眠るように、しずかに、おだやかにと願うのがふつうだろう。ともしびが消えるというイメージに対して、「火柱たてて」とはあまりに烈しいではないか。

火柱は高く、もっと高く、そして赫く、もっと赫く。やがて衰えても曼珠沙華がなお燃えつづけるほどに、熱く、強く、いまを生きたいという切なる思いか。


石飛如翠(いしとびじょすい)1919年、島根県生まれの俳人。 




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