仲夏・時候/6月初旬から中旬にかけて、夏の特異な雨季である梅雨に入ること。
水郷の水の暗さも梅雨に入る 井沢正江
水郷というと母の生地を思う。地名にもその字がついており、大きな川に沿ってひらけた景色のよい明るい集落だ。
いまはもうないが、そこに江戸初期に建てられた古い家があって、祖先が代々暮らしていた。
柱の太い家の奥は晴天でもうす暗かったのを憶えている。梅雨の季節ともなれば、連日その暗さをうっとうしく思いながら生活していたことだろう。
この句は直接には暗い梅雨空の下の景色を詠んでいるけれど、「水の暗さも」の「も」に、これからひと月ばかり陰鬱な日々を耐え忍ばなくてはならない人々の息づかいが感じられる。
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