大寒(だいかん)

晩冬・時候/二十四節気の一つ。1月21日頃。大寒から立春までが一年のうち最も寒さがきびしい。

 

大寒や転びて諸手つく悲しさ  西東三鬼

 

まず笑ってしまった。あまりの率直さに。「両手」ではなくて、「諸手」という響きに。

転んで諸手をつくなんて、転び方としてはうまいほうだ。

だが、大寒である。アスファルトの冷たさが、痛みとともに両の手にじんじん伝わってくる。

鼻先には地面、耳元には行き交う人々の靴音。

早く立ち上がらねば。なのに腕がすぐには伸ばせない。もう若くはないのだ。

みっともない姿を他人にさらしている時間が、耐えがたく長い。

 

西東三鬼(さいとうさんき)1900-1962年。岡山県生まれの俳人・歯科医師。「断崖」を創刊・主宰。新興俳句の旗手として活躍した。

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